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京都地方裁判所 昭和39年(ワ)1118号 判決 1968年3月26日

主文

一、被告は原告三名に対し、別紙目録記載宅地四四〇坪六合一勺(一、四五六・五六平方メートル)の中四八一・〇九平方メートル(一四五坪五合三勺)但し、同目録添付図面記載斜線部分について京都地方法務局に分筆登記申請をなし、右宅地四八一・〇九平方メートルおよび別紙目録記載建物について、同法務局に取得者を原告三名、その持分三分の一とする所有権移転登記申請をせよ。

二、被告の反訴請求を棄却する。

三、訴訟費用は、本訴反訴を通じ、被告の負担とする。

事実

第一、原告らの求める裁判

一、本訴について

(1)  主文第一項と同旨

(2)  本訴の訴訟費用は被告の負担とする。

旨の判決

二、反訴について

(1)  主文第二項と同旨

(2)  反訴の反訴費用は被告の負担とする。

旨の判決

第二、被告の求める裁判

一、本訴について

(1)  原告らの請求を棄却する。

(2)  本訴の訴訟費用は原告らの負担とする。

旨の判決

二、反訴について

(1)  原告らは別紙目録記載土地建物がいずれも被告の所有であることを確認する。

(2)  反訴の訴訟費用は原告らの負担とする。

旨の判決

第三、原告主張の本訴請求原因

(1)  別紙目録記載土地建物は訴外奥田最〓の所有であつたが、右訴外人は大正一〇年八月八日死亡し、被告がその家督相続をして右土地建物の所有権を承継した。

(2)  被告の弟訴外奥田〓次は昭和一二年四月一三日分家するに際し、被告から右土地建物の贈与を受けたが、その所有権移転登記手続はしなかつた。

(3)  訴外奥田〓次は昭和一七年二月三日原告片田〓〓子と事実上の結婚をして、右建物の南半分において同棲し、同年一二月二六日婚姻の届出をなし右両者の間に原告奥田伊津子が昭和一八年一月五日、原告浜田奈美が昭和二〇年五月二三日各出生した。

(4)  訴外奥田〓次は昭和二四年六月一五日死亡したので、原告ら三名がその遺産を相続し、持分三分の一宛として右土地建物の所有権を取得した。

(5)  訴外奥田〓次は昭和一二年四月一三日被告より別紙目録記載土地建物の贈与を受けた際、その引渡しも受けて、所有の意思をもつて平穏かつ公然に、右土地建物の占有を開始し、その占有の始め善意にしてかつ過失なく、右訴外人死亡後は原告らにおいてその占有を承継し、いずれも右建物の南半分に住み、残りの北半分を訴外武永広吉に賃料一月金三、五〇〇円で賃貸し、右土地中、右建物の敷地を除いた約九五坪のうち、約四二坪は訴外冨田耕助に賃料一月金六〇〇円で、同約五三坪は訴外冨田修作に賃料一月金七九五円で各賃貸し、右各賃料は訴外奥田〓次が生存中は、同訴外人が、右訴外人死亡後は原告らが受領して来たもので、その固定資産税については右土地の分筆も、これら土地建物について所有権移転登記も受けていなかつたため、被告名義で納税令書が発行されるので、昭和三八年まで毎年年額金二〇、〇〇〇円を被告に交付して納付して貰つていた。

(6)  右のとおり、訴外奥田〓次は昭和一二年四月一三日被告から別紙目録記載土地建物の贈与を受けたものである。仮りに右贈与が認められないとしても、右訴外人は昭和一二年四月一三日より一〇年の短期取得時効により右土地建物の所有権を取得したものである。仮りに右訴外人の占有開始時における善意、無過失が認められないとすれば、右訴外人の死亡後、原告らが所有の意思をもつて平穏かつ公然に、善意、無過失で右土地建物を占有して来たのであるから、右訴外人が死亡した昭和二四年六月一五日から一〇年間の短期取得時効により原告らが右土地建物の所有権を取得したものである。右原告らの善意、無過失も認められないとすれば、右訴外人の占有を承継した原告らが、昭和一二年四月一三日より二〇年の長期取得時効によつて右土地建物の所有権を取得したものである。

(7)  ところが原告片田〓〓子が昭和二八年一二月九日訴外片田三男と婚姻し、原告浜田奈美が同日右訴外人と養子縁組し、原告奥田伊津子が昭和三〇年一二月九日右訴外人と養子縁組したことに被告は感情を害したので、原告奥田伊津子のみは昭和三六年一〇月四日協議離縁して奥田姓にもどつたが、被告は昭和三八年四月頃になつて原告らに対し、別紙目録記載建物の明渡しおよび前記地代および家賃を返すように請求しだした。

(8)  別紙目録記載土地を含む宅地四四〇坪六合一勺については、被告を取得者とする所有権移転登記がなされており、同目録記載建物については、被告を所有者とする所有権保存登記がなされている。

(9)  よつて、原告らは、被告に対し右宅地四四〇坪六合一勺より別紙目録記載土地に分筆登記申請を求め、その分筆された土地と、別紙目録記載建物について、原告らを取得者、その持分各三分の一とする所有権移転登記申請を求める。

第四、原告ら主張の本訴請求原因に対する被告の答弁

(1)  原告主張の請求原因(1)の事実は認める。

(2)  同(2)の事実中被告の弟訴外奥田〓次が昭和一二年四月一三日分家したことは認めるがその余の点は否認する。

(3)  同(3)の事実は認める。

(4)  同(4)の事実中訴外奥田〓次が昭和二四年六月一五日死亡したことおよび原告ら三名がその遺産を相続したことは認めるがその余の点は否認する。

(5)  同(5)の事実中、訴外奥田〓次が昭和一七年初め頃より、その生存中別紙目録記載建物の南半分に居住していたこと、原告片田〓〓子が昭和一七年二月三日以降、その余の原告らが、いずれも、その出生以降、右建物部分に居住していること、および原告らが昭和三九年一一月頃右建物部分に居住していたことは認めるがその余の点は否認する。訴外奥田〓次は昭和一二年四月一三日分家と同時に、京都市左京区田中飛鳥井町三三番地の一の借家に居住することとなり、その本籍を右に転籍した。被告は昭和一二年九月まで別紙目録記載土地建物を占有していたが同年一〇月応召して北支に赴き、昭和二〇年九月復員するまでの間、訴外奥田〓次に、右土地建物の管理を依頼したもので、昭和一六年末頃、別紙目録記載建物の南半分に居住していた訴外早瀬某が退去したので、昭和一七年初め頃訴外奥田〓次が右に入居し、昭和一七年二月三日原告片田〓〓子と結婚して、同所において同棲したものである。訴外奥田〓次の右占有は、被告のためにする占有であつて所有の意思をもつてする自主占有ではない。被告は昭和二〇年九月右復員と同時に、右訴外奥田〓次の管理を解き、爾来右土地建物を占有している。被告は右建物の北半分を訴外武永広吉に賃料一月金三、五〇〇円で賃貸し、右土地中右建物の敷地以外の土地約九五坪のうち北部の約四二坪を訴外冨田耕助に賃料一月金八〇〇円で、その南部の土地約五三坪を訴外冨田修作に一月金九五〇円で賃貸しているものである。原告らは昭和三七年までは、被告に対し僅かながら右建物南半分に対する賃料を支払つていたが、昭和三八年以降は全くその支払いをしない。

(6)  同(6)の事実は否認する。

(7)  同(7)の事実中、原告片田〓〓子が昭和二八年一二月九日訴外片田三男と婚姻し、原告浜田奈美が同日右訴外人と養子縁組し、原告奥田伊津子が昭和三〇年一二月九日右訴外人と養子縁組し、昭和三六年一〇月四日協議離婚したことは認めるが、その余の点は否認する。

(8)  被告は訴外奥田〓次に別紙目録記載土地建物を贈与したことはなく、右訴外人および原告らの右土地建物に対する占有は自主占有ではないから、原告の本訴請求は失当である。

第五、被告主張の反訴請求原因

(1)  別紙目録記載土地建物は、訴外奥田最〓の所有であつたが、右訴外人が大正一〇年八月八日死亡し、被告がその家督相続をして右土地建物の所有権を承継した。

(2)  右土地建物は現在も被告の所有である。

(3)  然るに、原告らは、本訴請求原因の如く主張して、右土地建物に対する被告の所有を争う。

(4)  被告は、本訴請求原因に対する答弁の如く、右土地建物を訴外奥田〓次に贈与した事実はなく、また原告らは、右土地建物を時効によつて取得するいわれもない。

(5)  よつて、被告は原告らに対し、別紙目録記載土地建物が被告の所有であることの確認を求める。

第六、被告主張の反訴請求原因に対する原告らの答弁

(1)  反訴請求原因(1)および(3)の各事実は認める。

(2)  同(2)および(4)の各事実は否認する。

(3)  原告らは、本訴請求原因で主張した理由により、別紙目録記載土地建物の所有権を取得したもので、被告は右土地建物の所有者ではないから、被告の反訴請求は失当である。

第七、証拠(省略)

別紙

京都市左京区田中野神町二番地の一

一、宅地 四四〇坪六合一勺(一、四五六、五六平方メートル)

の内、四八一、〇九平方メートル(一四五坪五合三勺)

但し、添付図面記載斜線部分

右土地上

家屋番号同町二番一

一、木造瓦葺二階建居宅

床面積 一階 二七坪二合(八九、九一平方メートル)

二階 二一坪四合(七〇、七四平方メートル)

<省略>

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